相続対策の常識が変わる?投資用不動産の相続税評価見直し案を徹底解説

不動産の知識

1. 導入:相続前にマンションを買えば節税できる?という従来の考え方

「相続税対策として、現金を不動産に変える」—これは、これまで富裕層や資産家の方々にとって、最も一般的な相続対策の一つでした。
特に、都心の賃貸用マンションやオフィスビルなどの投資用不動産を購入し、それを相続財産とすることで、相続税の負担を大幅に軽減できるというスキームは広く知られていました。
しかし、この長年の「常識」が、今、大きく変わろうとしています。政府・与党は、この不動産を活用した節税スキームに対し、「購入から一定期間内(報道では5年程度)に相続された投資用不動産は、購入価格を基準とした評価に見直す」方向で議論を進めています。
この改正案は、不動産オーナーやこれから相続対策を考える方々にとって、資産設計の根幹を揺るがすほどの大きなインパクトを持つ可能性があります。

2. 現行の不動産評価と“節税スキーム”の仕組み

現行制度の概要:評価額と時価の大きな乖離

日本の相続税における不動産評価は、以下の公的な評価額を基本としています。

•土地: 国税庁が定める路線価方式(公示価格の約80%水準)

•建物: 市町村が定める固定資産税評価額(建築費の約50%〜70%水準)この評価方法は、市場で実際に取引される時価(実勢価格)に比べて、一般的に低く評価される傾向があります。特に、都心の新築・築浅の賃貸用マンションでは、時価が数億円であっても、相続税評価額がその3分の1から5分の1程度に圧縮されるケースも珍しくありませんでした。

従来の“節税スキーム”の実態

この「時価 > 評価額」という構造を利用し、相続直前に賃貸用マンション等を購入することで、評価額と時価のギャップを利用して相続税を圧縮する手法が、従来の“節税スキーム”の核心でした。
富裕層を中心に広く使われてきたこの手法は、結果として、多額の現金を不動産に変えた人ほど相続税の負担が軽くなるという状況を生み出しました。
これに対し、「制度の趣旨に反するのでは」「富の再分配という目的に反して不公平」といった批判が長らく寄せられてきました。

3. 与党・国税当局が問題視しているポイント

公平な税負担を図る狙い

相続税は、富の再分配を目的とした重要な税制です。
実勢価格と評価額が大きく乖離したまま放置すると、結果として負担の公平性が損なわれてしまいます。
今回の見直しは、実際の価値に近い形で評価し、税負担をより公平に分担するという原則をあらためて重視するものです。
与党税制調査会や国税庁は、節税目的が明らかな「駆け込み購入」を抑制し、税の公平性を確保することに強い問題意識を持っています。

「購入から5年以内の投資用不動産」を購入価格で評価する案とは

報道ベースでは、今回の改正案は2026年度税制改正に向けた議論の一環として進められています。
検討されている方向性は、「購入から一定期間内(報道では5年程度)に相続された投資用不動産は、購入価格を基準とした評価にする」というものです。
一部報道では、地価の動向や取引時期も考慮し、実際の購入価格の8割程度を評価額とする案も浮上しており、実勢価格に近い水準での評価を目指すものと見られています。
これにより、「今のうちに不動産を買えば節税できる」という従来の考え方は、購入から5年以内の相続においては、ほぼ成り立たなくなる可能性が高いと言えます。

4. 富裕層・相続対策・不動産市場への具体的な影響

改正案が与える影響(想定されるインパクト)

この改正案が実現した場合、以下のような具体的な影響が想定されます。
1.相続税負担の大幅な増加:
•富裕層
・相続対策目的の不動産購入者にとっては、相続税評価額が従来の数倍に跳ね上がり、相続税負担が大幅に増える可能性があります。
•特に、相続直前の購入(5年以内)を前提とした節税効果は、ほぼ失われることになります。

2.投資用不動産市場の需要減少:
•相続目的の購入が減ることで、一時的に投資用マンション市場の需要が減少し、特に都心の中古マンション市場の価格や流通量に影響が出る懸念があります。

3.資産設計の根本的な見直し:
•相続対策の柱として不動産を考えていた方は、資産全体の設計を根本から見直す必要に迫られます。

5. まだ決まっていない論点と、読者が特に注意すべきポイント

今回の改正案は、税制の方向性を示すものですが、現時点ではまだ詳細が固まっていない不透明なポイントが多数あります。読者の皆様が特に気にすべき点は以下の通りです。

不透明なポイント

•適用範囲の不透明性:
•すでに所有している物件にもどこまで適用されるのか(改正後の取得に限られるのか/過去の取得であっても「5年以内の相続」で対象になるのか)といった点が、現時点では明確に決まっていません。

•評価基準の細部:
•「購入価格」をベースとする場合、その価格に付随費用(仲介手数料、登記費用など)を含めるのか、また「8割評価」の具体的な算定方法など、制度の細部が固まっていません。

読者が今からできること

この不透明さが、今後の相続設計・資産運用の方針に大きく影響し得ます。
制度の細部が固まる前に、「知らずに従来どおりの感覚で不動産を買ってしまうリスク」は非常に高いため、以下の準備が重要です。

1.「駆け込み購入」の再検討:
•改正案の内容
・適用範囲が固まる前に、「相続目的の物件取得を急ぐ」のは非常に危険です。節税効果が期待できなくなる可能性を考慮し、一旦立ち止まってシミュレーションを行う必要があります。

2.資産全体の整理と専門家への相談:
•既に投資用不動産を所有している人は、保有継続か売却か、借入の状況、他資産とのバランスなどを含めて、税理士などの専門家と一緒に整理することが重要です。

3.冷静なシミュレーションの実施:
•一時的な「不動産離れ」が起こる前に、今回の改正案が適用された場合とされなかった場合の相続税額を冷静にシミュレーションし、今後の対策を検討すべきです。

6. まとめ:改正決定前後にどう動くべきかと、専門家に相談する重要性

今回の相続税評価の見直しは、実勢価格と評価額の乖離を是正し、公平な税負担を実現するという、税制の根幹に関わる重要な動きです。
相続対策は、単なる節税ではなく、大切な資産を次世代へ円滑に引き継ぐための総合的な設計です。制度改正の動向を注視し、「不動産を使った節税」から「資産全体を最適化する相続設計」へと、意識を切り替えることが求められています。

相続などのお困りごとや不安な点がありましたら、 株式会社アール・エフ・マネジメントにご相談ください。 相続・不動産に関する無料相談窓口もご用意しております。

7. 参考・出典

•国税庁:財産評価基本通達(現行の評価方法の基本)
•報道
解説記事としての参考:note「相続前にマンション購入=節税はNGに?政府が『5年以内の投資用不動産』を購入価格で評価する方向へ」
•その他:日本経済新聞、朝日新聞などによる報道(2025年11月26日〜27日)
•注:本記事は、与党・国税当局による検討状況を報じたニュースを基に解説したものであり、確定した法令ではありません。最新の情報は、財務省や国税庁の公式発表をご確認ください。